- 作者: 佐藤亜紀
- 出版社/メーカー: 講談社
- 発売日: 2016/01/26
- メディア: 単行本
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時代小説なんだろうなあと思いながら読んでたら、大蟻喰先生の本を最後に読んだときも同じこと書いててちょっと笑った*1。過去の時代、外国の土地と人を舞台にしていても、これは現代を生きる現代の読者のために著わされた作品で、時代小説ってそういうものだ。
19世紀のガリチアが舞台とあって、恥ずかしながら場所も歴史的背景もとっさに浮かばなかったので、調べてみれば成程なと納得する。全編これ「不穏」が漂う作品の、時間も空間もそもそもが不穏の支配するところだというわけで。オーストリア・ハンガリー帝国やポーランドあるいはスラヴといううーん、要素?単純にナショナリズムや民族性だけでない、新進と旧弊、文化と土着、現実と幻視、生と死、様々なものが複雑に絡んでいく様は実に不穏で、クライマックスがさほど大ごとにならずにまとめられてしまうことすら穏便ではない。
たぶん、詳細なストーリー展開、あらすじなどよりも、そういう「空気」を読むことが大事なような気がするのだけれど。山本七平的な「空気を読む」ではなくてね。
不穏な空間は落ち着く。このラストは良いなあ…