ひとやすみ読書日記(第二版)

最近あんまり読んでませんが

アンシア・シモンズ「ライトニング・メアリ」

伝記というより伝記小説。メアリ・アニングの本を読むのは3冊目だけれどあーちなみに前読んだのはこれね。

abogard.hatenadiary.jp

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現在では絵本なども出ていて、日本の恐竜キッズの間でも結構な有名人…らしい。いいことです。そしてこの人の人生がどこまで幸福だったのか、彼女が果たした業績に世の中は報い得たのか、本書は児童書とはいえやや年齢層高めの読者に向けた、それなりにシビアでハードな物語になっている。時代性や当時の階級格差を見ればむしろ当然で、綺麗事で済ませないのも良識というものでしょうね。辛辣で現実的な本書のメアリの感情・思考は当時の女性、貧困階層の置かれていた状況を映すものでありながら、やはり現代の女子児童に対するメッセージ性も備えていて(いまこの単語をネット上で扱うのは注意を要するのですが)フェミニズム的だなと感じました。あとがきにもあるのですが、著者の意識や指向性がかなり濃いめに込められていて、それをどう受け止めるかは、読者の状況次第でもあるんだろうなあ。

雷に打たれたエピソードを始め「死」は様々な箇所に配置され、初潮を迎えて戸惑う様など、女性の置かれた立場の理不尽さに憤るところもウェイトが大きく振られています。読者の性差によって読後感が変わるような一冊でもあるかも知れません。

邦訳は「カシワイ」氏による挿絵が随所に挿入されていて、そのタッチは素敵だなと思わされました。読んでいて何か、クッションというか…