ひとやすみ読書日記(第二版)

最近あんまり読んでませんが

ネヴィル・シュート「渚にて」

 

渚にて【新版】 人類最後の日 (創元SF文庫)

渚にて【新版】 人類最後の日 (創元SF文庫)

 

エンタングル:ガール」*1でタイトルがあったので手に取ってみた。「渚にて」が大好きな女子高生ってどうなんだろうとか思ったけれど、こういうのは10代の頃に結構ハマるもので、自分も10代の頃に一度読んでる(笑)

今回読んだのは2009年刊行の新訳版。なので実質は初読…と言えるだろうか。グレゴリー・ペック主演の映画も有名で、そっちもずいぶん前に見ている*2

街から人々が姿を消すラストシーンや水兵の一人が潜水艦スコーピオン号から勝手に飛び出して釣りを始めるとか、そういう細かなところは印象に残っている(映画の方で記憶に残ってる)けれど、まー全体の内容はずいぶん忘れてましたねーうううむ。ストーリーの中でもっとも大きな位置を占める(と思っていた)謎の電文発信者の正体が解明されるのは中盤で、その後も結構なボリュームで「日常」が淡々と描かれていくのだな。このあたり原作と映画ではウェイトの置き方が変わってるだろうと思うけれど。

核戦争の恐怖というか「核戦争後の恐怖」を、だんだんと迫りくる破滅という形で描いて、ボタン一発でイキナリ世界が吹き飛んだりしない筆致は、やはり優しいものなのかも知れません。パニックや暴動に流されることなく、社会秩序と個々人のモラルが維持されたまま粛々と死に向かって行く様は理想というか幻想的ですらある。

これキューバ危機よりも前に書かれた作品なんですね。原著刊行は1957年というから朝鮮戦争直後の時代か。放射能が北半球からだんだん下がってくる、というのはもしかしたら科学的には正しくないのかもしれないけれど、そこのところはよくわからんのでスルーする。

核戦争とは関係なく、誰だっていつかは自分自身の死に相対峙するものなんだけれど、その時自分は落ち着いていられるのだろうか?そういうことを考えさせられる作品でもあります。

機会があれば映画も見直したいけれど、果たしてそんな機会はあるのかな。

*1:http://abogard.hatenadiary.jp/archive/2019/09/01

*2:2000年にリメイクTVシリーズというのが出来ててビデオもあるそうだけど、さすがにそっちは未見