ひとやすみ読書日記(第二版)

最近あんまり読んでませんが

ドナルド・E・ウェストレイク「ギャンブラーが多すぎる」

ウェストレイクを初めて読んだのは今は亡きミステリアス・プレス文庫のオレンジ背で「踊る黄金像」でした。陽気で明るいNYの雰囲気を前面に出した楽しいクライム・コメディで、同時に「マルタの鷹」の巧妙なパロディでもありました。本書はウェストレイクの死後14年経って初めて翻訳された作品で、初版刊行は1969年のもの。そういうのってどうなんだろうと多少は身構えて読んだのだけれど、こちらもまたちょっと昔のNYの雰囲気を(特に冬のそれを)楽しめる、肩の凝らないクライムコメディという感じで。

ギャンブル好きのタクシー運転手チェットが、インサイダー情報らしきネタを元手に掛けた競馬で大勝ちして、ノミ屋の所に配当金を受け取りにいったら殺されてて、あまつさえ犯人と誤解され、対立する二つのギャング組織に付け狙われて…という展開にもしやこれは「赤い収穫」パロディかなと思わせる。ノンシリーズの単体作品であってもキャラクターは魅力的に造形されて、特にヒロイズムでもなんでもない動機で動くチェットや、兄の敵を討ちにラスベガスからやってくるヒロインのアビーは美人で優秀で気立てが良いとか、その他にも色々とキャラ立ちしてるキャラがいろいろ。本編途中でチェットは何者かに狙撃されて負傷し、ベッドで療養する羽目になるんだけど、そこに関係者が次々に訪れてくる流れは一風変わった安楽椅子探偵のようでもある。

そして読んでいてだんだん犯人の目星がというか「この人物が犯人じゃないと話が面白く落着しないんじゃないだろうか」みたいな気分になり、(なにしろ「マルタの鷹」の巧妙なパロディ書く人だからなー)と、変な先入観で読み進めて行ったら

 

なんと!

 

犯人は全然違う人でした。

 

なのでその、

 

あまり面白くは落着しなかった(´・ω・`)

 

てゆーかあんな人物を犯人にしちゃっていいのか?それはノックスが戒めてるんじゃないのか??

 

でもこういうミステリーっていいよなあ。コージーとも違って、なんていうか、なんだろう。