第3回日本SF作家クラブの小さな小説コンテスト、「さなコン3」前回に引き続き今回も参加していました。前回は「果たして自分はいまでも小説が書けるのだろうか」という悩みを抱えながら(実は第1回のときは参加しようと思って書き出しまで行ったけれど、結局挫折した)の挑戦で、それでも1本は1次選考を通過することが出来ました。
※ちなみにこれです「人類の声」
2次選考には進めなかったものの審査員のおひとり門田充弘先生からツイッターで感想をいただき、非常に嬉しく、喜ばしく思いました。次の機会にも必ず応募しようと願ったものです。
それで、今回の目標は1次選考を突破して2次選考に進むことではなくて
最終選考に辿り着くことでした。なぜってそれは
池澤春菜嬢が
最終選考委員になってたので
読んでいただくためには
そこまで進まないといけなかったんだよォ!!(血涙)
とゆーその、なんだ、うん、嫌ですねオタクってね。俺も自分が嫌いだからセーフだ!(アウトや)
そんなこんなで投稿した作品は計4本。1本は締切後にわざと時間外になるタイミングで自動投稿して(そんなことのためにわざわざ課金してプレミア会員になってんだから阿呆だよなァ)選外。残りの3本は、1本が「一次選考にあと一歩だった作品」、2本が1次選考を通過、さらに1本は二次選考を通過して最終選考まで進みました。やりました!
第3部完ッ!!
というわけで当初の目的は果たせました。SFカーニバルの会場で「さなコン頑張ります!」と言っただけのことは出来ただろうと思います。誰に言ったんだって?言わせんなよそんなことふふっ(デュフフ顔
本日受賞作発表ならびに一次選考通過作品へのフィードバックコメントも出ましたので、選外のアレはともかくあらためて自作を語ってみようと思います。まあだいたいツイッターで書いてたことの焼き直しです。
・「BMI3249」
池澤春菜嬢が登壇されたSFカーニバルのトークショーのテーマがBMI、ブレインマシンインターフェイスについてのものだったのですね。そこでお話聞きながら「ミニ四駆に実装できれば『爆走兄弟烈&豪』みたいなことが実現できるかもなー」てなことを考えて、サイン会でお話ししようかなんて思ってたらいざ本人目の前にしたら舞い上がってすっかり忘れてしまって、帰りの電車の中でじゃあこのアイデアを投稿すればいっかーで、昇華したモノ。
前回の講評(というか、感想だな)でもっとキャラの内面があるとよいと言われて、今回の選考基準にもキャラクターの魅力が挙げられていたので、一人称でキャラクターの心情を直接述べるような文体にしました。もともとはVRでミニ四駆に熱中している主人公が最後カーチャンに怒鳴られて終わる。みたいなオチにしようとして上手く行かなくて、なやんでいたら「そうだモルカーだ!!」という天啓を受ける。天啓じゃなくてアイデアをTLでもらったのです。それでミニ四駆vsモルカーという対決モノになりました。やっぱレースカーは競わないとな。いけませんわな。それで今回キャラクターと同じくビジュアルには力を入れようと、そして読者のビジュアリティに訴えるためにはあらかじめ誰でも知っているようなモノを扱う方がやり易いだろうと、敢えて、敢えてですぞ、マグナムもモルカーもママ仮面も直球で出した!「水星の魔女」も盛り上がってた時期だった!!
幸いこの作品は一次選考を通過することが出来ました。それではフィードバックコメントを切り取って見ましょう。
まずBMI四駆、モル四駆というものが何なのかがわからなかった。形状、質量、大き
さ、イメージが掴めないので書いておいて欲しかった。
そうですね、世の中の人みんながみんなミニ四駆やモルカーに通じてる訳じゃありませんものね(´・ω・`)
教訓:カート・ヴォネガットが短編小説8か条の中で「ただひとりの読者を喜ばせるように書くこと。つまり窓を開け放って世界を愛したりすれば、あなたの物語は肺炎に罹ってしまう」なんて言ってるけれど、少しは窓を開けましょう。あなたの読者は決してひとりではないのです(´・ω・`)ノ
・「神はサイコロを振らない(ファンタジー小説)」
「『チャンスは残り3回です』とかいって、神にサイコロ振らせがちだよねー」「アインシュタインかーい」みたいなたわいない会話から即物的に生まれたもの。「ダンジョンズ&ドラゴンズ」の映画が話題になってたので、なら「T&T」風のちょっとコミカルなファンタジーはどうだろうと。コミカルの方向性がおかしいのは、これは作者がおかしいからである。でもさー、パーティーにケータリングスタッフって大事よ?ごはんが美味しければ大抵の問題は解決するのよ?なんて事とは関係なく、とにかくサイコロがさいつよなのである。「結局物理で解決する」のではなくてサイコロがさいきょうなの!と主張したいところだけれど、結局物理で解決しているよな(´・ω・`) この作品もビジュアル面はあらかじめ読者の持っている、いかにもゲームっぽいファンタジー観に委ねて書いてはいます。胸甲鎧に(ビキニアーマー)とルビ振るとかね。ルビ芸というのは楽しいなとここで気づきを得る。
この作品は「一次選考通過にあと一歩だった作品」に選ばれました。ではその講評を見てみましょう。
語り手の設定もユニークでよいのですが、話の展開やオチとほとんど関係ないまま終わってしまうのがもったいなく、そのあたりまでガッチリ練り込まれた作品を読みたいと思わされました。
なにしろ構想1日執筆1時間弱、単に小手先のワザだけで繋げて書いてしまったので、なんていうかイキオイしかありません、すいません(´・ω・`) あーあと、ポリコレは大事だ。諧謔はもっと大事だ。そこは忘れずに生きてゆきたい(´・ω・`)ノ
・「スペースサメハンター」
クラシカルなね、スペオペを書きたかったんですよ。SFというのは決して隅々まで科学考証の行き届いたハードSFだけではないし、スペースオペラというのも決して「銀河英雄伝説みたいな話」だけではない。もっとノスタルジックな、自由で奔放な、ヒーローが宇宙を飛んで人類を守る。みたいな、そういうお話を書きたくなりました。でもね、流石に昨今そういう話はなかなか成立しません。ただ古臭いだけの話になってしまわぬようにするためにはどうしたらよいか。
答えはサメだった。
サメならば仕方ない、サメはすべてを解決する。そういう話になりました。この作品は2次選考を通過して最終審査に進んだのですが、それにも増して本当に大勢の方から好評や応援のメッセージやツイッタースペースの音声配信までいただいて、それが一番の収穫でした。書いて良かった。喜んでもらえて良かった。調子に乗ってツイッターのアイコンまで変えてしまった。結局受賞こそ叶わなかったのですが、それよりもっと重く価値あるものを受け取れたものと思います。
次点で「スペースサメハンター」「クレーン・ゲームのある風景」でした。
大賞や特別賞には選べなかった作品にも、心の中で池澤春菜賞をお送りさせていただきます。
>君の夜空に、サメの姿はあるか!?
「ねーよ」
そう、居ないのです( ˘ω˘ )
まーしかし、本文中に本来3回あるバトルシーンの2回を書かずに済ますって大概だよなと、そこはちょっと反省している。とはいえ、ラストバトルに関しては読者の想像に委ねたうえで結末は明示するという、ちょっとしたワザを使えて、そこは自慢したい。
そしてあらためて思いますが、最終選考に残った20本の作品の中では、俺は俺のこの作品がいちばん面白くていちばん好きです。この気持ちを大切にして、今後も書き続けようと思います。
次回あるにしても池澤春菜嬢は運営から外れてしまうんじゃないだろうかという危惧はあるのじゃが(´・ω・`)
全体を通じて反省点というか今後注意していきたいのは、やはり読者の側の相続力に委ね過ぎるのもよくない、ということでしょう。少なからず書き手としては「逃げ」ではありますし、
作者が見えているものと、読者が読み取るものの差。全て知っている作者目線から離れて、読者として読んだときに過不足がないか、これできちんと理解して貰えるか
こういうことをちゃんと気にかけて行かねばならないなあと、あらためて思わされました。あと今回、どれも課題文に言う3回のチャンスをリセットするところから話を始めているので、それも逃げであるなあと思われる。
それでやっぱり、「日本SF作家クラブに加入しているプロの作家から講評を得られる」というのはさなコンの大きな特色と思います。次回さなコン4(それは必ず開催されると信じます)の折には、その点是非運営側にも傾注していただきたく思う所存。
「おまえが長く深淵を覗くならば、深淵もまた等しくおまえを見返すのだ」