SFは必ずしも未来を題材とするものばかりではないけれど、未来を題材とするものはやはりSFだ。70年代生まれの北米作家を中心にしたアンソロジーでいわゆる中堅どころと言うやつでしょうか、編者ブレイク・クラウチはじめぽつぽつ邦訳されたり読んでる人もいる。いちばん有名なのはアンディ・ウィアーだろうけれどアンディ・ウィアー読むの初めてだな。
これは邦訳でつけられたものと思いますが副題にある「未来を視る」というのがいいですね。未来を描くということはいまこの場所から先を視て、そして像を結ぶということです。それは予言でもないし占いでもない。結局は「いまを再認識すること」に、なるんだろうなあ。いまの我々が何を願い何を恐れているかを、未来図というカタチで描き出す。SFってそういうものです。
それが一番わかりやすいのはN・K・ジェミシン「エマージェンシー・スキン」で、環境破壊の進んだ地球を捨てて外宇宙に移住した人類の末裔がクローニング細胞の原料?を入手するために地球に潜入すると、そこでは文明も自然も豊かに復興していて…というもの。ネタバレとしては主人公たち男性白人優越主義者が地球を捨てて逃げだしたら、残った人たちのおかげで地球は豊かな自然を取り戻し環境も保全されますた。という、ある種の寓話というか馬鹿馬鹿しさすら感じさせるものなんだけれど、それでヒューゴー賞ノヴェレット部門受賞というのが「アメリカSF界のいま」を切実に反映するものであり。
まあしかし、テクノロジーの発達を願いながら同時にテクノロジーの発達の危険も思う。それがSF作家ってことかな。
なおこれ原書はAmazonオリジナルの電書とオーディオブックで、紙の本は出てないんだそうです。未来はいま、ですねえ。