ひとやすみ読書日記(第二版)

最近あんまり読んでませんが

ヴァイオレット・エヴァーガーデンTVシリーズ

再放送で履修完了しました。劇場版公開前に見終えられて良かったのだけれど、本来劇場版合わせで行われたはずの再放送が、2度目の公開延期により期日がズレてしまったからというのは、これは素直に喜ぶところではないよな…

 

ヘレン・ケラーが感覚を手に入れりような、聖痕(スティグマ)を持つ人が水上を歩行するような「奇跡」の話ではある。死者の蘇生もするかと思ったけれど、そっちはどうなるんだろう?

「帰還兵もの」でもある。ヴァイオレットがはじめて自分の意思や希望を他人に示したのが戯曲という「つくりごと」にまつわるエピソードだったのはなんか良かった。

軍事関連の描写は全部ヘンだったが、そこは本筋ではないからにこやかにスルーする(^q^)

 

劇場版は勿論、もう一回外伝を見直したいな。なにしろ前回見たときはなんも設定知らなかったんで「ロボット・アンドロイドもの」だと信じて疑わなかったのだwww

 

本放送当時は全然アンテナに引っかからなかったんだけど、それは同期の作品が強すぎたんだなーとあらためて。当時もこんなエントリ書いてたからねえ…。しかしこうして埋もれることなく作品は残り続ける。それは本当に素敵なことなのです。

 

だからクリアカード編の続きもですね、ワシが生きているうちにですね、

川村拓「事情を知らない転校生がグイグイくる。」⑥

 amazonのリンクはkindle版しか貼れないのか(´・ω・`)

 

さすがに6巻にもなると「事情を知らない転校生」どころの話では無いのだけれど、「ヨコハマ買い出し紀行」だってヨコハマに買い出しに出たのは最初と最後の2回だけだしでまあいいか。

登場話に即壊滅するサソリ団の話も良かったけれど、やっぱり今回はビデオチャット授業参観の回でしょうか。初出はわからないのだけれどコロナ自粛の頃だったりするのかな。そして太陽の親父は恒星で、でっかいねえという話でもある。

 

勤務先がな(´・ω・`)

チャーリー・ジェーン・アンダース「空のあらゆる鳥を」

 

びっくり、セカイ系小説でした。 

なんと懐かしい響きかー!

 

魔法使いの少女と、科学者の少年。どちらも天分の才に恵まれ、どちらも家庭生活や社会環境で孤立している二人が幼くして出会い、様々な障害にあって別れ、成長して再会するも世界はやがて崩壊の危機を迎え、その中で対立する2つの陣営に分かれた2人は…という「キミとボクのセカイ」かと思いきや、驚天動地のラストで実は全然別の「キミとボク」が世界を再構築するのであった。

 

うむ。

 

ネビュラ賞ローカス賞のダブルクラウンか。

 

うむ。

 

男女の毀誉褒貶、浮き沈みの激しいところはいかにもイマドキのアメリカ作品であって、キャラクター・アークを書いたら面白いでしょうね。お互い齢を重ねる中で別々に恋愛しパートナーを得てまた別れてようやく2人はお互いを…というクライマックスで悲劇がドカンと降ってくるところも実にイマドキだ。

作者がトランス女性で同性愛者だとあってそれはつまりどういうことかと考えて、ああヴァージニアスのフィーリアちゃんですねと2秒で結論が出たのも実にイマドキである。

池澤春菜・高山羽根子「おかえり台湾」

 池澤春菜嬢の台湾本としては4冊目(既刊はこちら)ですが、今回は作家の高山羽根子さん*1との共著で版元も違っているし、シリーズという訳ではないのですね。「一歩踏み込む二度目の旅案内」とサブタイトルにあるように、初心者よりもう少しレベルアップした人向けの台湾旅行スポットガイドです。各章ごとにプレゼンターを後退していくという趣向で、高山さんのパートは博物館やアートスポットなどこれまでの春菜嬢の本では見なかったような切り口、そして春菜嬢のパートはお茶や食べ物、薬膳などでありますが2人の共同プレゼンとして「幸福路のチー」を主軸に映画を紹介する章もあります。全体的にボリュームもあって楽しい旅の本、ちょっと遠出も憚られる昨今にあってはまさに読書こそ旅、なのでしょう。綺麗な建物の写真や綺麗な食べ物の写真に心も和みます…

気になったのは章によって本文のフォントサイズが他と揃ってないところがあったのと、そもそもなんでインプレスなんだろうというあたりかw

空豆と鶏肉のスープは真似してみようかな…(結局食べ物に収斂するのか)

 

しかしこの本の取材行はかなりギリギリというか、何かが少しでもズレてたら大変なことになっていたんだろうなぁと。

*1:「オブジェクタム」を読んだことがあります

アレン・スティール「キャプテン・フューチャー最初の事件」

 

※本記事は東京創元社の発売前ゲラ先読み企画に投稿した感想文を一部加筆修正したものです。ストーリー上のネタバレには極力触れないように心掛けているのですが、念のためご注意ください。

 

 

 

 

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今日泊亜蘭「光の塔」

光の塔 (ちくま文庫)

光の塔 (ちくま文庫)

 

 日本SF界の歴史に残る古典的作品。

読み始めてみたらどうも既読感があって「これは以前読んでたかなー」と思ったんだけれど、途中から明らかに未読の展開であった。思うに、以前手を出した時は途中で挫折したんではなかろうか。主人公の水原中佐のキャラクターが共感できないを通り越して嫌悪感さえ覚える有様なので…

 

まあなんというか、歴史ですね。「未来からの侵略者が現代を襲う」ものなのだけれど、現代たる21世紀の在り様が古いというか絵空事過ぎるというか太平洋いや大東亜戦争そのまんまじゃないのかという感も有りで(´・ω・`)

 

「宇宙兵物語」とか「怪獣大陸」とか好きなんだけどなあ。

ああ「宇宙兵物語」は前に読んでましたね*1。「怪獣大陸」も読み直したいとこだけど、まあ難しかろう…

シオドア・スタージョン フリッツ・ライバー他 中村融・編「猫は宇宙で丸くなる」

 アーサー・マッケンに「白魔」という小説がある*1。有名な作品で何度か読んでるのだけれど、感想を残したことは無かったか。かいつまんで言うと「白魔」というのは一人の少女が魔術師たちによって虜にされ仕込まれていく様を、いわば生贄の視点から描いたような(生贄と断言してよいのかは微妙なのだけれど)一本です。ほんでこの猫SFアンソロジーですが、

猫という生き物が如何にして人間を――とりわけ作家と呼ばれる種類の人間を――虜にし仕込んでいるかを、いわば生贄の視点から描いたもの、といえましょうか。日本では神林長平が特に有名ですが、猫という生き物はしばしば作家を虜にし、仕込むものです。もし貴方の身の周りに「私は猫を飼っている」とか「私は猫を愛している」などと言って憚らない人間が居たら、まず目の色を疑うべきである。思うにそれらは猫に飼われたり、猫に愛されている人間なのであって、主客は転倒しているからだ。

まあ、そういう作品が一杯載ってます。オールタイムのベテランから近年の書き手まで様々、既存のアンソロジーや短編集には未収録なものも多く、個人的な既読作品はひとつだけでした。

自分はひとから犬派か猫派とか聞かれたら迷わず恐竜派だと答える程度にはひねくれているので、猫派なひとや犬派な方が読んだらまた違った感想を抱くのだろうとは思いますが、ジェイムズ・H・シュミッツ*2の「チックタックとわたし」、ジェイムズ・ホワイトの「共謀者たち」の2本が良かったですね。猫という生き物の神秘性をあらわすかのように決して綺麗なだけでは無い話も多くて、ジェフリー・D・コイストラ「パフ」のホラーっぽいラストやデニス・ダンヴァーズ「ベンジャミンの治癒」のほろ苦さというのもまた良きかな。それとジョディ・リン・ナイ「宇宙に猫パンチ」(正直この邦題はどうかと思うが)が、イマドキ珍しい牧歌的というか古典的な宇宙SFで、まだアメリカのSF界にこんな作品書く人がいるんだなってのが割とオドロキでした。イマドキ言うても1992年の作品だから30年前なんだけどさw

*1:https://www.amazon.co.jp/dp/B00H6XBIWS/

*2:カバー画で変に有名な「惑星カレスの魔女」の著者