ひとやすみ読書日記(第二版)

最近あんまり読んでませんが

エーリヒ・ケストナー「五月三十五日」

五月三十五日 ケストナー少年文学全集(5)

五月三十五日 ケストナー少年文学全集(5)

池澤春菜先生ご推薦の一冊。

5月は31日までしかないけれど、もしも35日まであればどんなに楽なことだろう。締め切りとか締め切りとか締め切りとか。などと考えるのはまったくもって早計で、もしも本当に5月が35日まであれば、単にその分、仕事が増えるだけである。大人の世界では。

それが子どもの世界なら話は別で、五月の三十五日に「数学の得意な子は空想力に欠けるので南洋についての作文を書きなさい。明日までに」などと先生に言われるのは、そりゃ大人の世界よりも大変なんじゃあるまいか。などと思いつつコンラート君はリンゲルフートおじさんとローラースケートをはいた馬のネグロ・カバロと三人連れで南洋へと出かけるのです。おじさんの家のたんすを通って。

ちょっとシュールな雰囲気も醸す、ロードムービーいや股旅物か、南洋までの途中で訪れる様々な「国」の様子がたぶんこの本の白眉で、そこには社会風刺の視点が強く感じられるものだけれど「ここからなまけものの国が始まる 入場料無料 子どもは半額」がつぼにハマりすぎて困る。

後段では詩集から何篇か掲載があってケストナーの児童文学観を見ることができるのだけれど、社会風刺とか文学観とか、そういうのとは無関係に純粋に読書を楽しめる年齢というのは良いのだろうなあとか、そんなことを考える。

なにしろこっちはケストナーの児童文学を読むたびに「このだれそれ君もいずれはモスクワ前面やスターリングラードで(泣)」などとこう、純粋でもなんでもない観点が憑いて離れず(w