恥知らずのパープルヘイズ ―ジョジョの奇妙な冒険より― (集英社文庫)
- 作者: 上遠野浩平,荒木飛呂彦
- 出版社/メーカー: 集英社
- 発売日: 2017/06/22
- メディア: 文庫
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ジョジョの5部「黄金の風」、アニメを見終えたので再読する。ハードカバー版を初読したときの感想はこちら*1で、初読当時は「上遠野浩平がジョジョ小説を書いたらどうなるのか」という興味で読んでいたので、5部本編がらみのエピソードをさっぱり拾えてなかったのはやっぱり宜しくなかったな(笑)今回は「ジョジョの5部をどうやって違和感なく補完するか」みたいな観点で見て行ったので、ようやくいろいろ収まりました。別冊ユリイカだったか、執筆にあたってジョジョの(マンガのなかの台詞やト書きの)文体を徹底的に研究して再構築したようなことも目にしていたので、なるほど台詞はジョジョの台詞らしいし、地の文はジョジョのト書きのようである。マンガをノベライズ化する際に「文体」を移築するというのは、成程効果的であり、しかし他に例を知らない。まずマンガの方で文体が確立してないと、出来ない技でもあるし。
で、実は個別のシーンはそのままどころかかなりアレンジされていたのだなー。フーゴを軸にしてブチャラティとの出会いや、チームの他のメンバーとの対面シーンは原作からかなり大胆に(?)翻案されている。それでいて小説オリジナルキャラである麻薬チームが、リーダーであるヴラディミール・コカキが真っ先に倒されて、残された(敵の)キャラたちが右往左往するという流れになるのは、主従関係ではまず主の方が先に倒されて従のキャラが決断を迫られるという5部の流れに沿ったものだったのね。
なるほどなあ。
それでもやっぱりところどころに「上遠野浩平らしさ」をちゃんと出しているのはさすがで、物語の最後にジョルノと再会したフーゴが自分自身の弱さ、歪みのようなものを指摘される場面。それが決して批判でも非難でもなく、むしろ誰かによって内心の弱さを肯定されるというシチュエーションは実に上遠野浩平作品のようだ*2。それはまた荒木飛呂彦作品にはなかなか出来ないことである*3。
ハードカバー版には無かったエピローグ「トリッシュ、花を手向ける」が追加されていて*4、これには原作でも描かれなかったディアボロを倒した後のコロッセオでのシーンが含まれている。小説オリジナルであるはずなのに、原作マンガも読んでいないのに(笑)、「いや原作でたしかにこういうシーンを見たぞ」というような錯覚を覚える。たぶんスタンド使いのしわざだ!
そう音が、声が聴こえてくるようになったんだな。ちょっと前に入手して、でもアニメを見終えてから読み直そうと待っていたのは良かった。大正解であった。あとかどちんギアッチョのこと好き過ぎでしょwww