初めて岩男潤子さんを実際に目にしたのが、確かこの作品の舞台挨拶だったと思います。渋谷でやってた東京国際ファンタスティック映画祭じゃなかったかな?小柄な人だなあと思ったことが記憶に残ってるんだけど、それは座席が後ろの方だったからかもしれない。
あっKON'STONEまだ読めるんだ!その時の話が載ってる!!
そうだよなあ1997年のことだ。正式公開前なんでwikiの公開年とは違うんだな。個人的にもハードな時期でしたね俺。その後映像ソフトも購入したけれど、なにせLDなもので久しく見直して無かったのでした。うっかりチケット発売時刻間違えた結果最前列の真ん中というあんまり映画向きじゃない席になっちゃったんだけど、結果としては大画面で映像を「浴びる」ように見られたのは良かった。
4K映像について、忌憚のないところを正直に述べると、セルアニメとしての「粗さ」がむしろ強調されてるんじゃないかと感じました。元版を見た記憶もかなり古びてるんだけれど、セルのブレや表面のホコリとか、結構わかる(最前列真ん中なんてところで見たせいかもしれんが)。スター・ウォーズの旧三部作をいまのソフト、いまの視聴環境で視ると特撮の粗さがハッキリわかるとかそういう感じではあるのだけれど、むしろ「もうこういうセルアニメって製作されることは無いんだろうなあ」と、妙に感慨深くなりました。かなりの贔屓目で視ていることは認めるけれど、なんか「虚構」性が酷く高まってた気がする。
それとアイドルの在り方が、当時といまとでは全然違うものね。「アイドルを卒業して一般女優になる道を選ぶ女性」というシチュエーション自体が昭和平成というか20世紀的なものか。「KEY THE METAL IDOL」と共にアイドルアニメ全盛期の今、再評価されたい一本ではあります。
虚構と現実が交錯するストーリーなんだけれど、且つては対称的に感じられたものがもっとこう、フラットなものに映ったというか何と言うか。「目にしたものがすべて真実ではない」みたいなことはよく言われますけれど、この映画はたぶん「観客の目に映ったものがすべて真実」なんだろうなあ。阿佐ヶ谷の街を軽々と飛翔する未麻のカットでは浅草の街を軽々と飛翔する未麻が真実だし、そこで鏡に映る醜いルミちゃんのカットでは鏡に映る醜いルミちゃんが真実だ。「どちらかが真実であればもう一方は虚構」ではなくて、どちらも同時に真実で、どちらも同時に虚構である。ひとの視点がその時その瞬間に結んだモノが、真実である。そういう虚構性を奉じてひとは生きて行くんだろうなあ…なんてことを思っていたらラスト直前、病院で花束を受け取ったルミちゃんが未麻である自分を鏡の中に見るシーンに、ちょっと想像を絶するほど胸を打たれて、そして
むせてしまった(´・ω・`)
なるべく抑えたんだけどいちばんいい場面で周りの方に酷い迷惑をかけたように思う、大変申し訳ない。「私は本物だよ」と鏡の中に語り掛ける未麻と、鏡の中で未麻で在り続けるルミちゃんと、どちらも当人にとっては真実で本物で、映画を観ている観客からはどちらも疑わしい。本物ってなんでしょうね。
鏡、そして目。眼の描き方…だよなと思う。普段は死んだ魚みたいな目をしているME-MANIAさんがステージ上にアイドルの未麻を幻視するカットでは非常に美しい目が描かれるし、モブシーンの人間はそもそも目が描かれない。殺された被害者はすべて目をえぐられている。本作に於いて「見える」ことは、それ自体なんらかの特権のようである。
当たり前なんだけどあらゆる小道具、美術が全部1990年代だからねえ、いろいろ感極まるよね。インターネットのホームページが「最近の流行り」だという台詞とか、ね。
演技についてはもうね、みなさんすごいよ。鬼気迫るものがある。そしてやっぱり岩男潤子さん演じる霧越未麻の実感……だな。アイドルとしての一面、そこから女優に化けていく一面、リアルな女性としての一面、多面的な人物像を演じています。これもKON'S TONE で読んだんだけどオーディションで選抜した時、今監督は前歴をご存知なかったそうで、そうだよテープオーディションだったんだよな。詳しくはこちらを。
いろんなことが、いろんなところで奇跡みたいにぴったりはまって完成している。そんなアニメなんですね。4K版は今後全国で公開されるそうなので、未見の方は是非どうぞ。
なお再三書いてるけど最前列真ん中なんてところでみたもんだからその
例のシーンが
大迫力で
(*/ω\*)←サイテーだ