ひとやすみ読書日記(第二版)

最近あんまり読んでませんが

古処誠二 の検索結果:

古処誠二「敵前の森で」

敵前の森で 作者:古処 誠二 双葉社 Amazon うーんうーんうーん、この人はもっと評価されて欲しいと思うのだけれど、実際文章はいいし展開も面白いしPIATも出てくるし、なんだけど、全部終わってみたら「なんかいい話」に落とし込んじゃうのはなんでだろうな。昔はもっと「綺麗だけど悲しい」「気持ちのやり場に困る」ような話が多かったように思うんだけど、なんか最近は特定の読者層に受けるような話を書いてるんじゃないかって危惧が。 まあ喜ぶ読者がいてそれを読んでくれるなら、作家冥利に尽き…

今年の一番について考える。

…の良さかも知れない。古処誠二のいくつかの作品で、味わった感覚。 来年は別に大河見ないと思うけど。 それとね、11月12月に岩男潤子さんの出演された舞台公演を観ました。ひとつは朗読劇「秋の朗読劇【絆】」で、もうひとつは舞台劇「それがあっての今日 ~yesterday2022~」。ステージって「祭壇」だなってつくづく思わされました。面白かったなあ… 来年は池澤春菜嬢の出演される朗読歌劇「椿姫」を見に行きます。朗読と歌劇、どんなステージになるんだろうね。 そんなこんなんで紆余曲折な…

深緑野分「戦場のコックたち」

…ミステリーというのも古処誠二など手掛けてる人も多く、案外親和性の高いものかも知れません。本書は連作短編の形式を取って「ノルマンディーの戦場で未使用の予備パラシュートを集める兵士」とか「消えた粉末卵3トン」みたいにちょっと「日常の謎」っぽいミステリーが展開されます。とはいえ事件が起こる現場はまるで日常ではないので、あからさまに不審な人物がいきなり死んだり、レギュラーメンバーだと思っていたキャラがいきなり死んだり、探偵役だと思っていたキャラがいきなり死んだりする(←ネタバレよくな…

月村了衛「機龍警察 白骨街道」

…ことを考えるのは主に古処誠二の一連のビルマものを読んだ時なのだけれど、月村了衛の「機龍警察 白骨街道」を読んで、やはりそんなことを考えた。 いやあ。 ひさしぶりにすごいの読んだなって。 世間様からは2周ほど周回遅れだろうと思うので書いちゃうけど、作中では(現実のミャンマーがそうであったように)軍事クーデターが勃発する。でも執筆時期を考えたらなにそれ未来予知?とか思うところなんですが 決定的だったのは連載中に勃発したクーデターだ。これには参った。 (amazonのリンク先掲載著…

古処誠二「ビルマに見た夢」

…メディア: 単行本 古処誠二のビルマものというのも随分巻を重ねてきたけれど、本書は珍しくいい話というか「きれいな話」が続く連作短編集。「小説推理」連載の双葉社刊という事情が関係しているのかな?ここから出てる作品は他の版元(角川とか)に比べるとソフトであったりユーモラスであったり、そしておそらくは壮年・初老の男性読者をターゲットにしているのではないかと目される。本書でもっとも際立つキャラクターであるモンネイ少年なんかは、孫を見るような気持ちを読者に持たせる、そういう役割りで配さ…

古処誠二「生き残り」

生き残り 作者: 古処誠二 出版社/メーカー: KADOKAWA 発売日: 2018/07/27 メディア: 単行本 この商品を含むブログ (1件) を見る 古処誠二も最近はすっかりビルマものばかりになってしまったような印象がありますが、*1今回もやはりビルマもの、インパール作戦失敗後の撤退行における軍隊と兵士、組織集団と個々人の在り様を描くものです。イラワジ河の渡河点で丸江一等兵と戸湊伍長の二人が出会った「森川」なるひとりの兵隊の不信と謎の解明を、丸江の視点で描く「現在」と…

古処誠二「いくさの底」

いくさの底 作者: 古処誠二 出版社/メーカー: KADOKAWA 発売日: 2017/08/08 メディア: 単行本 この商品を含むブログを見る 戦場で起きた「殺人事件」の真相と犯人を明らかにする、という点ではミステリー色の強い一編。もともとミステリー畑の出の人なので、謎の置き方と解き方は本格(っていうのかな)なものです。とはいえ主人公は傍観者に過ぎず、謎を解く仕事と役割は概ね主人公の視界の外で起きるので、ミステリーとして真正面から読むのは弱いかなあ。 やっぱり最近のこの人…

古処誠二「中尉」

中尉作者: 古処誠二出版社/メーカー: KADOKAWA/角川書店発売日: 2014/11/29メディア: 単行本この商品を含むブログ (15件) を見る終戦記念日にこの本を読めたのはよかった。いつも書いてる気がするけれど、古処誠二はもっと評価されるべき。そしてこれもいつも書いてる気がするけれど、この人の作品の最大の魅力は「登場人物に感情移入し辛い」ことなので、やっぱり大受けはしないのかな。例のアレよりよっぽどいい作品を書いていると思うのだけれど、本屋大賞とかには選ばれ難いか…

古処誠二「ニンジアンエ」

ニンジアンエ作者: 古処誠二出版社/メーカー: 集英社発売日: 2011/11/25メディア: 単行本 クリック: 1回この商品を含むブログ (1件) を見る古処誠二ってもっと読まれてほしい人なんですけど、いまひとつ話題になってないような気がします。エンターテインメント戦記の類にしては地味且つ暗い話ばかりなので仕方が無いかも知れませんが、そこが魅力なんだけどね。 タイトルはビルマ(現在のミャンマー)の言葉で「宣撫」の意。ひさしぶりの長編は従軍記者を主人公に据え、英軍ウィンゲー…

古処誠二「ふたつの枷」

ふたつの枷作者: 古処誠二出版社/メーカー: 集英社発売日: 2010/07/26メディア: 単行本 クリック: 8回この商品を含むブログ (8件) を見る四編からなる短編集。「線」の時*1ほど地域や部隊の一貫性は無く、初出誌も一定ではないので「連作」という形ではないのか。しかし収録作品に「ふたつの枷」というものはなく、それが主題なのだろうな…。戦時下で枷がふたつ、といえばなるほどあれとあれなんだけど、どうも言葉にすると薄っぺらになりそうでなかなか書けません。困ったもんだな。…

古処誠二「線」

線作者: 古処誠二出版社/メーカー: 角川書店(角川グループパブリッシング)発売日: 2009/08/26メディア: 単行本購入: 1人 クリック: 10回この商品を含むブログ (11件) を見る古処誠二という人は別にシリーズものを書いてるわけではないし、これまで読んだ作品は出版社も異なるのだが、それでも旧日本軍の負け戦はシリーズもののように少しもネタが尽きないのであった。本書は多分著者初の短編集で、ニューギニア戦線を扱った連作短編集。ポートモレスビー攻略とかオーエン・スタン…

古処誠二「七月七日」

七月七日作者: 古処誠二出版社/メーカー: 集英社発売日: 2004/09メディア: 単行本 クリック: 11回この商品を含むブログ (32件) を見る文庫版もありasin:4087463087古処誠二、二冊目。津○陽が文句言ったのはこれだったか?ともあれ面白い、良いなーと思う。戦争に限らずなのだが人に行動を起こさせるものは上から来る命令といったタテ関係ではなくて同僚戦友あるいは社会といったヨコ関係の意識だってところが良いのだろうな。「戦争における人殺しの心理学」asin:4…

古処誠二「メフェナーボウンのつどう道」

…ンのつどう道作者: 古処誠二出版社/メーカー: 文藝春秋発売日: 2008/01メディア: 単行本 クリック: 10回この商品を含むブログ (23件) を見る恥ずかしながら古処誠二を知ったのは本書が初のことである。自分と同世代(2年しか違わない)の書き手が太平洋戦争を題材にしてここまで硬質な作品を著せるということに正直感服した。本当に面白い小説を読むとしばらく呆然となる自分がいる。久しぶりにそんな感覚を味わった。作中明確に日付は記されていないが1945年4月以降ビルマ方面軍が…